ホールディングスカンパニーという用語は世間一般にもかなり浸透してきた感があります。
ホールディングスとは持ち株会社を設立する時に、よく使われる手法となっています。
昨今は日本のどんな地域においても中小企業の事業承継の話題が尽きことはない、経済ネタともなっているのですが、事業承継の問題を解決するためにも持ち株会社を設立して解決するというケースも増えてきているのです。
関井圭一社長が考える会社経営の難しさ
私が勤務する会社でも、この手法によりまして昨年中に事業承継を完了させることができました。
ここに至るまで、4~5年程度に渡りまして各種施策を検討してきたのですが、金融機関からの提案により、まずは株価計算を行うことになったのです。
当社は長年にわたり業績が緊長に推移していたこともあり額面5万円で発行していた株券ですが、相続税評価額ベースでは60万円にまで跳ね上がっていたのでした。
ビジネス面で私が全面的に尊敬している関井圭一氏に学び、オーナーイコール社長という図式で経営を行っていたのですが、オーナーの親族は経営を引き継がないことに決めていまして、社内から役員を選抜し経営を引き継がせることになったのです。
社長職を継がせるとは言葉は美しいのですが、表面だけの社長交代であるならば、そのような例はたくさんあるわけですが、高価な株式の移転も伴う社長の交代ともなれば株式の買い取りといった資金の負担をどのようにするのかといった問題は金融機関としては格好の商売のネタとなるわけでして。
青森「古遠部温泉」の事業継承者内定 廃業の危機乗り越える https://t.co/pAb9NZuiyd
— 弘前経済新聞 (@hirosakikeizai) May 26, 2023
最近の金融機関の動向としては、金融緩和の影響もあってか企業の業績は順調に推移してきており、融資のネタとなる案件も資金調達自体が間に合っている、資金調達が必要な場合であっても金利に関しては著しく低いレートでの調達が多くなっており金融機関としては融資のネタからは収益を得にくい状況になっていることもまた事実なのです。
そうであるならば、たとえば事業承継の案件に組み込んで、税理士法人等とコラボの上に提案を行い、提案したスキームが採用された暁にはフィーをいただきましょうといったビジネスの展開にシフトしているといえます。
そういうわけですから金融機関としては、本部内に事業承継の専門チームを編成する等して支店から情報を吸い上げる形で案件に対応するスキームをとっているといえます。
オーナーから株式を買い取りするため
さて、ホールディングスの話に戻しましょう。
オーナーから株式を買い取りするために、個人対個人の売買であるならば、相続税評価額が適用になり、購入するだけの金額が一時に用意できない場合においては、個人的に借りてくるか、銀行から借りてくるかという選択が迫られてくるわけです。
ホールディングスを設立して株式を買い取る場合においては、相続税評価額ならぬ法人税評価の金額での買取りとなり、多くの場合は相続税評価額より高い金額での売買を余儀なくされてしまうのです。
しかし相続税評価額の売買代金を用意できない後継者にとっては、ホールディングスカンパニーを設立して高い株価となってしまうものの、銀行がホールディングスに融資をしてくれるという確約があるならば、高い株価であっても、このスキームを選択せざるを得ないのではないでしょうか。
融資を受ける場合は、返済財源としては持ち株会社の下にぶらさがる事業会社の配当金により返済するというスキームが一般的だと思われます。
親会社が子会社が得られる配当金は税務上は益金不算入というスキームにより税金がかからないことになっているのです。
持ち株会社を設立するためには、役員・出資者の立場で資本金を出さねばなりません。
しかし相続税評価額でオーナーから株式を買い取りできることと比較してみても極めて負担が少ない形で間接的に株式を取得できることは優位な点であるといえます。
事業承継のフォーマットを考える必要がある
中小企業は、ハコモノを存続させることについて、オーナーはオーナーの親族へ、言ってみれば問答無用の形で経営権を譲渡してきた歴史があります。
しかし時代の変遷とともに、オーナーは経営の苦労を子息・子女には味合わせたくないという気持ちになることもあたりまえになってきました。
その結果、士業の方々も含め事業承継のフォーマットを考え、どんなフォーマットがベストチョイスになるかを考える新しいビジネスのマーケットが醸成されてきたといえるのです。
法人税評価額で計算された株価は高額になる話は前に記載しましたが、企業が獲得してきた利潤はいったい誰のものなのかという議論に行きつくともいえます。
事業承継に伴う融資は、企業の自己資本の部分を長い時間をかけながら少しづつ減らしていくというスキームにも他なりません。
経営権を獲得した会社が事業承継により痩せていくことはオーナーにとっても受け継いだ者にとっても本意ではない筈。
まとめ
やはり企業経営とは企業を大きくしてナンボ、利潤を獲得してナンボの世界なのです。
このことをはき違えないように、企業経営者の節度を持ちながら、お互いにとってウインウインの関係をもっていきたいものです。