「神社本庁の役割が知りたい」
「神社本庁って何?」
「神社本庁の歴史が知りたい」
神社本庁は伊勢神宮を至高とする全国およそ8万もの神社を包括する団体をいいます。
その名称から世間一般にはよく誤解されることがありますが、官公庁の一種というわけではなく、宗教法人法にもとづいて文部科学省からの認証を受けた包括宗教法人の位置付けです。
法人は自然人と同様に権利義務の主体になることができるのが特色であり、法人にならないこと、あるいは包括宗教法人の傘下に属していないことをもって宗教活動そのものを否定されるわけではありません。
そのため世間には神社本庁と関係なく宗教活動を行っている神社もあり、有名どころであってもいわゆる単立神社として独立して教義を広めているものがいくつかあります。
もちろんこうした例外はあるにしても、全国8万社が集う意義は大きいといえます。
神社本庁が創設されたのは昭和21年2月3日
神社本庁が創設されたのは昭和21年2月3日のことですが、これは当時の時代背景に照らして考える必要があります。
周知のとおり、昭和20年8月に我が国がポツダム宣言を受諾して連合国に降伏し、長らく続いていた太平洋戦争が終結を迎えました。
その後進駐してきた連合国軍総司令部は、我が国から軍国主義的な思想を除去することが恒久平和の礎になるものと確信し、日本国政府に対してさまざまな指令を発しています。
そのひとつに昭和20年12月15日の神道指令があり、戦前の国家神道を解体し、全国各地にある神社を国家から分離することによって、政教分離と信教の自由を確立することを命じました。
これに対して当時、神職養成の機関として存続していた皇典講究所をはじめとする神社関連の民間団体が結集し、神道指令下において全国の神社がこれまで培ってきた伝統を守るための団体として、新たに神社本庁を設立したのがはじまりとなっています。
神社本庁設立の目的
設立の目的に掲げられているのは、包括下にある全国各地の神社の管理や指導を中心にして、伝統を重視して祭祀の振興や道義の昂揚をはかり、祖国である我が国の繁栄を期すること、世界平和に寄与することです。
また神職のみならず一般の人にとっても、神社はこれまで心のよりどころとして長い歴史のなかで崇敬を受けてきた存在ですので、神道や神社に関する正しい知識を普及啓発していくことも、重要な使命のひとつとなっています。
神社本庁の宗教法人法上の事務所は東京都渋谷区代々木、ちょうど明治神宮の北参道の入口にありますが、それぞれの都道府県にもその地域における神社に関連した事務をつかさどるために都道府県神社庁が置かれています。
神社の人事や財務をはじめ、地域の振興などもこうした神社庁の役割です。
もちろん神社とはいってもあまりにも数が多く、その由来もまちまちであるため、ひとつの教義に無理に集約することは困難です。
昭和55年5月神社本庁憲章が定められる
そこで昭和55年5月、それぞれの神社の精神的統合を象徴する基本的な規範として神社本庁憲章が定められました。
宗教法人の代表役員は総長ですが、この憲章にもとづき、別に総裁や統理が置かれており、団体の名誉を象徴し表彰を行うこと、あるいは団体を代表することがそれぞれの役目となっています。
憲章にはそれぞれの神社で祭祀を行いそのご神徳を広めるとともに、氏子や崇敬者たちの繁栄を祈念すること、これまで受け継がれてきた故実や慣習・伝統などを尊重すること、境内はつねに清潔にし確実に管理することなども定められています。
将来的に憲章を改廃しようとするときには、統理が発議し、評議員会において出席者数の3分の2以上の賛成をもって決めるなどの、手続きに関連した規定も含まれます。
直接的に傘下にあるわけではないものの、神社の信仰に関連した団体もいくつか存在します。
神社新報社は神社関連の唯一の新聞社
たとえば全国神社総代会は神社の氏子総代からなるもので、事務所もまた代々木に置かれています。
神社新報社は神社関連の唯一の新聞社となっており、皇室や全国各地の神社の祭事その他の活動内容を中心とする報道で知られます。
新聞のほかにも日本神名辞典などのさまざまな出版物を発行して知識の普及に努めています。
ほかに昭和44年に設立された神道政治連盟も関連団体のひとつとして外せないものです。
この組織は日本の伝統や文化を後世に正しく伝えることが目的であり、自主憲法の制定や英霊に対する国家儀礼の確立、領土問題の啓発などといった、神道の立場からの多分に政治的な主張を発信しています。
こうした団体の趣旨に賛同する国会議員が集まる神道政治連盟国会議員懇談会も別にあります。
関係団体の一種ではありますが、特にその活動の奨励や育成などの名目で関連が深いものは指定団体と呼ばれています。
まとめ
指定団体には全国の神社に奉祀する若手の神職からなる全国組織である神道青年全国協議会、同じく各神社の婦人会の全国組織にあたる全国敬神婦人連合会、氏子の立場において神社や地域社会の発展に寄与する若手の団体である全国氏子青年協議会、神社が経営している幼稚園・保育園・認定こども園などの互助組織である全国神社保育団体連合会などがその主なものです。